第13話 彫る人に掘られる かがわとわ(絵・芦野信司)

                                     花びらの縁に、彫刻刀が斜めに入る。桂の盆に切り込みされた牡丹が、立体的に浮き上がってゆく。彫刻刀を操る右手の指先と、反対側から押し込んで力添えする左手の親指。削って浮いた木屑を手早く払うのも、左の親指だ。こうして近くで見ると、左親指の役割って大切なのだなとわかる。彫る位置に合わせて、盆の向きが頻繁に変わる。  か…

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